この記事は「相続シリーズ」全5回の最終回です。
- 「うちは大丈夫」が一番危ない!相続トラブルの実態
- こんなはずじゃなかった…実際にあった相続トラブル事例5選
- 遺言書の種類と選び方|公正証書遺言がおすすめな理由
- 相続が発生したら?手続きの流れと期限を完全ガイド
- 👉 元気なうちに始める相続対策|遺言・家族信託・後見制度(この記事)
シリーズ最終回です。
ここまで「相続トラブルの実態」「具体的な事例」「遺言書の作り方」「手続きの流れ」と解説してきました。
最後にお伝えしたいのは、すべての対策は「元気なうちに」しかできないということです。
今回は、遺言書以外の選択肢も含めた3つの生前対策をご紹介します。
認知症になったら「手遅れ」になる
まず知っておいていただきたい事実があります。
認知症が進行して判断能力が低下すると、以下のことがすべてできなくなります。
- ❌ 遺言書を書くこと
- ❌ 不動産を売却すること
- ❌ 銀行口座から大きなお金を引き出すこと
- ❌ 保険を解約すること
- ❌ 家族信託の契約を結ぶこと
つまり、「まだ元気だから大丈夫」と思っている今が、対策ができる最後のチャンスかもしれないのです。
65歳以上の約5人に1人が認知症を発症するとされています。70代、80代であれば「いつなってもおかしくない」という前提で動くべきです。
生前対策①:遺言書 ─ 最も基本的な備え
シリーズ第3回で詳しく解説しましたが、改めてポイントをまとめます。
こんな方におすすめ
- 「誰に何を渡すか」を自分で決めたい方
- 相続人同士のトラブルを予防したい方
- まずはシンプルに、コストを抑えて対策したい方
遺言書ができること
- ✅ 財産の分け方を指定
- ✅ 遺言執行者を指定(手続きのスムーズ化)
- ✅ 相続人以外への遺贈(内縁パートナー、お世話になった方)
- ✅ 付言事項(家族へのメッセージ)
遺言書の限界
- ❌ 認知症になった後の財産管理はできない
- ❌ 生前の財産運用には使えない
- ❌ 死後にしか効力が発生しない
費用の目安: 当事務所では公正証書遺言の作成を77,000円〜で承っています。
生前対策②:家族信託 ─ 認知症対策の切り札
「家族信託」は2007年の信託法改正で使いやすくなった比較的新しい制度です。近年急速に注目を集めています。
家族信託のしくみ
簡単に言うと、財産の管理を信頼できる家族に託す契約です。
- 委託者(親): 財産を持っている人
- 受託者(子): 財産の管理を任される人
- 受益者(親): 財産の利益を受ける人
例えば、父が自宅の不動産を長男に「信託」すると、長男が父の代わりに不動産を管理できるようになります。父が認知症になっても、長男の判断で自宅を売却したり、修繕したりできます。
こんな方におすすめ
- 親が高齢で、認知症のリスクが心配な方
- 不動産(実家、アパート等)を持っている方
- 親の生前中から財産管理を始めたい方
家族信託ができること
- ✅ 認知症発症後も、受託者が財産を管理・処分できる
- ✅ 不動産の売却・建て替え・賃貸管理が可能
- ✅ 「遺言代用機能」で、死後の財産承継先も指定できる
- ✅ 二次相続以降の承継先(孫など)も指定できる(遺言ではできない)
家族信託の限界
- ❌ 認知症になった後では契約できない
- ❌ 身上監護(介護・医療の代理)は含まれない
- ❌ 設計・契約書の作成に専門知識が必要
- ❌ 受託者に適切な家族がいない場合は使えない
費用の目安
家族信託は財産の規模や設計の複雑さによって大きく異なりますが、一般的に30万〜80万円程度です(信託契約書の作成+コンサルティング)。不動産の信託登記がある場合は、別途司法書士費用もかかります。
生前対策③:成年後見制度 ─ 最後の砦
成年後見制度は、判断能力が低下した方を法的に保護する制度です。
2つのタイプ
「法定後見」(すでに判断能力が低下した場合)
- 家庭裁判所が後見人を選任
- 後見人が財産管理と身上監護を行う
「任意後見」(まだ元気なうちに準備する場合)
- 本人が「この人に頼みたい」と決めて契約
- 判断能力が低下した時に、契約が発動する
こんな方におすすめ
- 身寄りがない、または頼れる家族がいない方
- 介護や医療の手続きも含めてサポートが必要な方
- 財産管理だけでなく「生活全般」の支援が必要な方
成年後見制度ができること
- ✅ 身上監護(施設入所契約、医療の同意)
- ✅ 財産の保全・管理
- ✅ 悪徳商法などからの保護
成年後見制度の限界
- ❌ 財産の積極的な運用はできない(裁判所が許可しない)
- ❌ 不動産の売却にも裁判所の許可が必要
- ❌ 後見人への報酬が毎月発生(月額2〜6万円程度)
- ❌ 一度始めると、原則として本人が亡くなるまで続く
3つの制度を比較する
| 遺言書 | 家族信託 | 成年後見 | |
|---|---|---|---|
| いつ効力が発生するか | 死後 | 契約時から | 判断能力低下後 |
| 財産管理 | ✕ | ◎ | ○(制限あり) |
| 財産の処分 | ✕ | ◎ | △(裁判所許可) |
| 身上監護 | ✕ | ✕ | ◎ |
| 認知症対策 | ✕ | ◎ | ○ |
| 死後の財産承継 | ◎ | ◎ | ✕ |
| 費用 | 数万円〜 | 数十万円〜 | 月額2〜6万円 |
| 手軽さ | ◎ | △ | △ |
おすすめの組み合わせ
実は、これらの制度は組み合わせて使うのが最も効果的です。
パターンA:シンプルな備え
→ 遺言書だけでOK
「相続人間でトラブルなく分けたい」というシンプルなケースは、公正証書遺言だけで十分です。
パターンB:認知症が心配な場合
→ 家族信託 + 遺言書
不動産や預貯金の管理を家族信託でカバーしつつ、信託に含めない財産(家具、車など)は遺言書で承継先を指定。
パターンC:身寄りがない・家族に頼れない場合
→ 任意後見契約 + 遺言書
信頼できる専門家(司法書士・弁護士など)と任意後見契約を結び、判断能力が低下した後のサポートを確保。死後の財産承継は遺言書で。
「うちはどのパターン?」チェックリスト
以下の質問に答えてみてください。
質問1: 親は70歳以上ですか?
→ はい → 家族信託の検討を
質問2: 主な財産に不動産が含まれますか?
→ はい → 遺言書は必須。家族信託も検討を
質問3: 相続人間の関係は良好ですか?
→ いいえ → 遺言書は必須。弁護士への相談も検討を
質問4: 認知症のリスクが気になりますか?
→ はい → 家族信託または任意後見の検討を
質問5: 身寄りがない、または頼れる家族がいない?
→ はい → 任意後見の検討を
一つでも「はい」があった方は、まず専門家に相談することをおすすめします。
シリーズ全体のまとめ
5回にわたってお伝えしてきた「相続シリーズ」のポイントを振り返ります。
第1回: 相続トラブルの76%は「普通の家庭」で起きている
第2回: 実家の共有、口座凍結、知らない相続人…事例は他人事じゃない
第3回: 遺言書は公正証書がベスト。費用は「保険」と考える
第4回: 相続発生後は期限に注意。行政書士は書類作成のプロ
第5回: 元気なうちに「遺言+家族信託」で万全の備えを
一貫してお伝えしたいメッセージは一つです。
「早すぎる」ということは、絶対にありません。
明日、認知症と診断されたら。明日、事故に遭ったら。
そうなってからでは、選択肢は激減します。
「元気な今」だからこそできる準備を、一つずつ始めていきましょう。
生前対策のご相談は行政書士法人フェリスへ
「遺言書と家族信託、うちの場合はどっちがいい?」
「まず何から始めればいい?」
そんなご質問にお答えします。
当事務所では、ご家庭の状況をじっくりお聞きしたうえで、遺言書・家族信託・任意後見の中から最適な組み合わせをご提案します。
初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
*行政書士法人フェリス*
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